産婦人科

研修期間：1ヶ月

　卒後研修目標の一つに、「緊急を有する病気を持つ患者の初期診療に関する臨床的能力を身につける」とあり、女性特有の疾患による緊急医療を研修する必要がある。
　この中には、子宮外妊娠、流産、卵巣嚢腫茎捻転といった、生命の危機に瀕する可能性のある女性特有の疾患が含まれており、これらを適確に鑑別し、初期治療を行える。

　思春期、成熟期、更年期の生理的、肉体的、精神的変化は女性特有のものである。
　女性の加齢と性周期に伴うホルモン環境の変化を理解するとともに、それらの失調に起因する諸々の疾患に対する系統的診断と治療を研修する。また、これら女性特有の疾患を有する患者を全人的に理解し対応する態度を学ぶ。

妊娠分娩と産褥期の管理に必要な知識と共に、母性保護、生殖医療のあり方を学ぶ。特に、妊産褥婦に対する投薬の問題、治療や検査をする上での制約等についての特殊性を理解する。

1. 生殖生理学の基本を理解すること
・母体の生理
・胎児の分化、発育の生理
・胎盤の生理
・羊水の生理
・分娩の生理
・産褥の生理

2. 正常妊娠、分娩、産褥の管理

3. 異常妊娠、分娩、産褥の管理（リスクの程度を判定し、いかなる症例についても、少なくともプライマリケアは行い得ること）

4. 妊・産・褥婦の薬物療法（母児双方の安全性を考慮した薬物療法を行い得ること）

5. 産科検査（少なくとも各検査法の原理と適応を理解し、またそのデータにより適切な臨床的判断をなしえること）
・妊娠の診断法
・超音波検査法
・羊水検査法
・胎児、胎盤機能検査法
・分娩監視装置による検査法
・Ｘ線検査法
・その他

6. 産科手術の修得（特に以下について独立して行い得ること）
・子宮内容除去術
・吸引分娩法
・帝王切開術

7. 産科麻酔と全身管理（麻酔指導医の下で必要な麻酔全般 にわたる修練を受けることが望ましい）
・麻酔法の種類と適応を理解する
・全身管理を行い得ること

1. 婦人の解剖（生理学を理解する）
・腹部、骨盤、泌尿生殖器、乳房の解剖学、 泌尿生殖器の発生学、性機能系の生理学

2. 婦人科疾患の取り扱い
・感染症（性病を含む）の診断、治療を行い得ること
・腫瘍：良性腫瘍（エンドメトリオージスを含む）については、診断、治療を行い得ること。悪性腫瘍については、少なくとも早期診断、病理、治療についての一般的知識を有すること。
・内分泌異常（発育、性分化異常を含む）について、一般治療に必要な知識と経験を有すること。
・不妊症について、一般治療に必要な知識と経験を有すること。
・性器の垂脱について、診断、治療を行い得ること
・婦人科心身症（更年期障害を含む）について、検査、診断、治療を行い得ること。
・乳房疾患について、乳房検診を行い得ること。
・その他の一般治療に必要な疾患診断、治療を行い得ること。

3. 婦人科疾患の全身管理を行い得ること
・救急時の全身管理を行い得ること。
・輸液・輸血を行い得ること。
・薬物療法を行い得ること。

4. 婦人科手術　その１
・術前、術後の全身管理を行い得ること。
・手術のリスクを評価し得ること。
・術後合併症の診断と処置ができること

5. 婦人科手術　その２（主治医として以下の手術を執刀できること）
・子宮内要除去術
・付属器摘出術
・単純子宮全摘出術（腹式、膣式）
・子宮脱に対する根治手術 ※悪性腫瘍の根治手術の助手を務めた経験のあること

1. 性機能系に関するホルモンの種類、生理作用、作用機序、代謝等を理解すること

2. 内分泌検査法の原理と適応を理解し、結果の判定が可能なこと
・基礎体温測定法
・頚管粘液検査法・ 膣内容塗抹検査法
・各種ホルモン測定法
・各種ホルモン負荷試験

3. ホルモン療法の種類と原理を理解し、その経験を有すること

4. 排卵誘発法、排卵抑制法
・子宮出血止血法、子宮出血誘発法
・黄体機能不全治療法
・乳汁分泌抑制法（高プロラクチン血症治療法）
・更年期障害治療法
・月経随伴症状治療法

5. 産科内分泌
・胎盤ホルモンの種類、生理作用、作用機序、妊娠経過による変化などを理解すること
・胎児胎盤系におけるステロイドホルモン産生の機序と臨床的意義を理解すること

6. 子宮収縮（分娩）に関するホルモン（オキシトシン、プロスタグランディンなど）の基礎知識を有し、それを臨床に用いられること
・乳汁分泌の機序を理解すること

1. 婦人性器の感染症
・性器感染症の特徴を理解すること
・病原体の種類、検出法、感染による症状を理解すること

2. 産科の感染症
・妊婦における感染症の特殊性を理解すること
・胎内感染と胎芽、胎児病（先天異常）の関係を理解し、患者を指導し得ること
・周産期感染の診断、治療、予防ができること
・新生児感染症の取り扱い方法を理解していること

3. 治療法
・抗菌剤の種類と特徴を理解していること
・抗菌剤の選択を適切に行い得ること
・禁忌、副作用を理解していること

1. 婦人性器の基本的な組織構造を理解していること

2. 婦人科腫瘍の病理組織学的特徴を理解していること

3. 病理組織学的診断の内容を的確に理解し、それにより治療方針を決定し得ること

4. 細胞学的診断（スメア検査）の内容を的確に理解し得ること

5. 染色体及び、性染色質検査法を理解していること

6. 剖検例の見学が望ましい

1. 妊、産、褥婦、新生児の保健指導を行い得ること

2. 家族計画の指導を行い得ること（経口避妊薬の投与、ＩＵＤの挿入・抜去を含む）

3. 母体保護法などの母性衛生関連法規を理解していること

1. 社会保険制度の概要を理解していること

2. 診療記録の作成、整理を適切に行い得ること

3. 患者あるいは、関与する他の医師、パラメディカル、その他との信頼関係を確立するに足る倫理と人間性を有すること